復興への取り組み

平成17年3月20日に10時53分に福岡県西方沖地震があり、玄界島島民は市内中央区の九州電力記念体育館に全島避難しました。同日、福岡市は福岡市地域防災計画に基づき、「福岡市地震災害復旧・復興本部を設置」。玄界島の復興は、復興対策検討委員会と、市の復旧・復興本部が現地に設けた「玄界島復興担当部」との共働により進められました。

玄界島について

玄界島は、福岡市中心部から北西約20km沖に位置し、穏やかな博多湾と玄界灘の境に浮かぶ島です。
島のほとんどは斜面地で、漁港埋立地以外に平坦な土地はなく、島の南端に漁港や公共施設が集中しています。震災前は、その背後の斜面集落部は、曲がりくねった道路や石段に囲まれ、石積の上に立った住宅が密集していました。

地形
周囲:4.4km  面積:1.14km  最高地点:218.3m(遠見山)
人口等
人口:700人(男:339人 女:361人) H17.2.28住民基本台帳
世帯数:232世帯 H17.2.28住民基本台帳
学生数:小学生34名、中学生18名、高校生37名 H17.3.22現在
就業者数:301人 うち漁業就業者 154人(51%) H12国勢調査
産業別割合:一次産業52%、二次産業3%、三次産業45% H12国勢調査
暮らし
教育・保育:保育所1所、小学校1校、中学校1校
医療機関:診療所1所、歯科医療所1所
産業:主産業は漁業、福岡市の重要な漁業拠点
ライフライン:電力・上水は島外から海底ケーブルにより供給。ガスはLPガスを島外から搬入し集中配管。

玄界島の被害

震源に近かった玄界島は、人的被害は少なかったものの、島のほとんどの家屋が一部損壊以上の被害を受けるという壊滅的な状況でした。大半の住宅が急傾斜地に密集しているとともに、狭い階段道路などの脆弱な公共基盤であたったため、自主再建は極めて困難でした。

人的被害 物理的被害
死者 0人 H17.8.31現在 住家被害 214件
負傷者 19人 H17.8.31現在 被害認定状況 全壊 107件 半壊46件 一部損壊61件(全214件中)
※内閣府基準に基づく被害度認定調査結果
避難者 433人 H17.3.20現在
公共施設の被害
施設 震災前の状況 被害状況
道路 ・島内延長:約3.1km(兼用道路含む)
・集落内の道路は狭隘な階段状となっている。
・集落部の道路は、擁壁崩壊などにより、路体から被害を受けた部分もある。
・集落部以外の道路は側溝の被害がある程度。
漁港 ・福岡市の管理する第2種漁港。国の漁港漁場整備長期計画により整備中であった。 ・岸壁、物揚場、護岸、漁港道路等に甚大な被害。
・漁船・漁具等は被害なし。4月30日から漁再開。
小学校
中学校
・小学校校舎はS50年代の木造。
・中学校校舎は鉄筋コンクリート造。
・小学校は、グラウンドや校舎敷地に多数の地割れ。校舎等が傾斜し、南棟と北棟の間にずれがある。
・中学校は、グラウンドに多数の地割れ。
公園 ・集落部上部の高台に平成2年度に設置。
(1,292m2)
・盛土補強材の破断、四阿の傾斜・亀裂、園路の亀裂。
集落排
水施設
・平成13年8月から集落排水施設が供用開始
されており、水洗化が進められていた。
(斜面部現在管路延長約1,400m)
・処理場は被害なし。
・斜面部で一部被害を受けている。
水道 ・水道普及率97.3%。 ・配水管3ヶ所の破損、高所配水池の擁壁に被害あり。
・斜面地については一部被害あり。
仮設住宅への入居
  入居当初(H17年4月) 入居当初(H19年5月)
かもめ広場 仮設住宅 97 243 19 442
玄界島 仮設住宅 98 274 83 273
教員住宅(仮設利用) 8 15 8 14
市営住宅(一部仮設利用) 23 55 24 58
自宅利用 10 16 7 18
県営住宅(平成19年3月完成) - - 50 112
玄界島 小計 139 360 172 485
合計 236 603 191 527

斜面集落部の被害 宅盤が崩壊した家屋 道路の沈下 石積み擁壁の崩落

復興までの取り組み

被災住宅が密集している地区の住環境改善と災害防止を図るため、小規模住宅改良事業の手法により、土地の買収や建物の除却を行った後、改良住宅の建築や戸建て用地の造成、道路・公園等の公共基盤設備を行いました。

復興への基本方針 ・玄界島集落再生にあたっては、島民の意向を踏まえながら小規模住宅地区等改良事業を実施した。
・小規模住宅地区等改良事業に合わせて、漁港施設、小・中学校等の公共施設の災害復旧事業を一体的に行った。
・基盤の再生と共に、地域産業・コミュニティ再生を連動させるため、島民との共働により玄界島復興プラン(目標像)を策定した。

  • にぎわいゾーン
  • 公園整備公園整備公園整備
  • 斜面移動支援施設
  • 新ガンギ段
  • 道路計画道路計画道路計画
  • 市営住宅・県営住宅市営住宅・県営住宅
  • 戸建住宅用地戸建住宅用地
復興事業の計画
上下移動支援施設
上下移動支援施設

急傾斜地の多い玄界島において、高齢者や障がい者などの上下移動を支援するために、市営住宅エレベータを活用し、ブリッジに連結することで、高所と連絡できるようにしました。

にぎわいゾーン
にぎわいゾーン

島の中心部は、島の玄関口となる「浜ひろば」から斜面地の「展望公園」までを一体的に整備するとともに、集会所や老人憩いの家を配置し、子供からお年寄りまで集い、島民も観光客も楽しむ事ができます。

復興内容 復興にかかった事業費
施行面積 約7.4ha 平成17年度 約13億円
施行期間 平成17年〜19年度 平成18年度 約30億円(土地建物買収、解体除却、造成実施設計等)
計画戸数 165戸(戸建住宅用地50戸分 市営住宅65戸 県営住宅50戸) 平成19年度 約28億円(土地建物買収、解体・造成工事等)
道路計画 外周道路、浜道:幅員5m 集落内道路4m 総事業費 約71億円(市営住宅建設、造成工事、道路・公園設備等)
その他 市営住宅エレベータを利用した上下移動支援施設及び島の中心部をにぎわいゾーンとして設備。
また既存公園を機能回復とともに新たに3公園を設備。

新しい玄界島

新しい玄界島から見た海震災から復興までの年表生まれ変わった玄界島は、戸建住宅と集合住宅を建築し、上下運動を支援する市営住宅エレベータを設置しました。
にぎわいゾーンには港や郵便局、漁協、購買店、集会所、ケアセンターなどがあり、子供からお年寄りまで住みやすい島へと生まれ変わりました。これからは様々な方向性を考え、より美しい玄界島にしていきたいと思っています。
福岡市と住民の努力と想いで生まれ変わった玄界島に一度きてみてはいかがでしょうか。

震災から復興までの年表

月 日 主な動き(太字は地元の動き)
平成17年3月20日 10:53 本震発生(M7.0)
11:20 福岡市災害対策本部設置
17:00 玄界島住民島外避難開始(24:00避難所へ収容完了)
4月12日 福岡市地震災害復旧・復興本部設置、玄界島復興事務所設置
20日 6:11 最大余震発生(M5.8)
玄界島復興事務所(仮設)開設
25日 かもめ広場仮設住宅入居
26日 玄界島仮設住宅入居
30日 漁再開
5月7日 玄界島復興対策検討委員会(以下、復興委員会)設立
21日 第1回島民総会:斜面地の一体的整備決定
6月15日 復興委員会、阪神・淡路震災復興事業事例視察(~16日)
18日 復興委員会、第1回意向調査実施(~20日)
7月6日 復興委員会、山崎福岡市長に要望書を提出
10日 復興委員会、「玄界島復興だより」第1号発行
11日 復興委員会、麻生福岡県知事に要望書を提出
14日 玄界島復興事務所開設
17日 第2回島民総会:事業手法を小規模住宅地区等改良事業に決定
8月1日 復興委員会、国へ要望書を提出
5日 復興委員会、第2回意向調査実施(~16日)
17日 玄界島復興まちづくりワークショップ
9月10日 第3回島民総会:土地鑑定評価、建物調査の説明
12日 現況測量・建物調査開始
10月13日 皇太子殿下 かもめ広場ご視察
22日 座談会開催(25日、30日とも)
11月26日 第4回島民総会:土地・建物の買取目安価格を提示
12月3日 復興委員会、第3回意向調査実施(~9日)
平成18年1月28日 第5回島民総会:しまづくり案決定
2月14日 土地・建物契約開始
3月16日 復興工事(家屋解体工事)着手
3月20日 震災一年行事:防災訓練の実施
9月下旬 斜面地の家屋解体工事完了
11月1日 戸建て協議会設立
平成19年3月20日 県営住宅完成
25日 かもめ広場からの一部帰島
4月 玄界島内の保育園、小中学校再開
8月下旬 造成工事完了
10月下旬 宅地分譲契約
30日 天皇・皇后両陛下 玄界島ご視察(29日、かもめ広場)
平成20年3月20日 復興事業完了記念式典(雨天中止)
25日 かもめ広場からの全員帰島
31日 玄界島復興事務所解散
【参考文献】
福岡市都市整備局玄界島復興担当部『玄界島復興事業 福岡県西方沖地震による玄界島の被害と復興への取組』平成20年3月31日。
福岡市『福岡県西方沖地震記録誌【19年版】』平成19年3月。
高木通裕『福岡県西方沖地震による玄界島の被害と復興への取り組み』災害復旧・復興対策セミナー(福岡会場)講演 平成20年11月27日。
玄界島復興対策検討委員会『玄界島復興だより』第1号(平成17年7月10日)〜第16号(平成20年3月31日)。